今回は、分譲住宅であっても大事な要素である「耐震」について深堀していきます。
どこの会社も「うちは地震に強いです!」というPRをされていますが、果たして本当にそうなのか?その見極めができるようになる内容になっています。
耐震なら、大手ハウスメーカーが強そうだけど、地元の会社は大丈夫?
こんなことを思っている方には、参考になるのではないでしょうか。
それでは、早速当記事の結論からお伝えしていきます。
・熊本地震でも「新しい家」が倒壊しました。築年数が新しい、今の基準で建てられているなら大丈夫だろう、というのは間違いです。 ・大事なことは、壁・柱の量だけでなく「配置のバランス」と「接合部の強度」です。 ・1つ1つ、皆さんがチェックすることはできません。「構造計算(許容応力度計算)」によるチェックをしているか?を必ず聞きましょう。 ・「構造計算」は実はやっていない会社の方が多い、という事実を知った上で住宅会社と交渉しましょう。 |
1. 熊本地震では「今の基準」でも倒壊
まだ記憶に新しい熊本地震ですが、残念ながら益城町周辺を中心に多くの家が倒壊しました。
発生した日時は、2016年4月14日と16日に起きており、連続して震度7クラスの地震が襲いました。
2016年と言うとつい最近ですが、実はこの当時で築年数が10年以下の住宅も倒壊しています。
上図は、国交省がまとめた木造住宅における被害状況の一覧です。
一番左の昭和56年以前の住宅、いわゆる旧耐震基準の住宅では約3割が倒壊、全体の95%がなんらかの被害があった報告になっています。
しかし、平成12年(2000年)以降に建てられた住宅の約4割で被害が出ています。
阪神淡路大震災を経て、耐震基準が強化されたとは言え、4割もの比較的新しい家が倒壊~損傷してしまう実態は恐ろしいですよね。
さらに、突っ込んで分析してみましょう。
1-1. 耐震等級別の被害状況(熊本地震)
被害が少なかった平成12年(2000年)以降の建築物で、耐震性能別に見た表がこちらです。
建築基準法を満たすレベルで建てられた301棟のうち、約4割が倒壊・大破・損傷をしており、このグラフからは「建築基準法を満たした耐震設計では安心できない」ことを如実に物語っています。
一方、耐震等級3を取得した家では14棟のうち2棟が軽微な損傷で済んでいます。
なお、住宅性能表示制度を取得するためには、後述する「壁量計算か構造計算か」は問われておらず、この軽微な損傷の2棟が、どちらの計算でされているかは不明です。
ただ、いずれにしても最低でも耐震等級3であることで、安心感は高くなることはわかります。
つづいては、家が倒壊・損傷しないために大事なポイントを解説していきます。
2. 配置バランスと接合部の強度
建築基準法でも当然、地震のエネルギーに耐えうる計算は必須ではありますが、その計算すべき項目が「最小限」しかありません。
そのため、上記のような熊本地震で被害の差に繋がってしまうのです。
2-1. 地震で家が倒壊するメカニズム
まずは、地震で家が倒壊・損傷するメカニズムを理解することで、建築基準法で計算する最小限の項目では足りない、ことがわかります。
こちらの動画で見ていただくと、一般的に多い2階建ての住宅での倒壊するメカニズムです。
地震で建物が揺らされると、柱と基礎、柱と梁の接合部が「破断」することで、家が滑るような形で1階が潰れます。
地震による死者の多くが、2階建ての1階にいるケースであり、自分の家での圧死になっています。
平屋にすると、2階建ての自重がなくなるため、このようなリスクは減らすことができますが、土地の大きさ等もあるためどうしても2階建てが主流になってきます。
それでは、2階建ての家でこのように倒壊しないためには、どのようにしたら良いか?を紹介していきます。
2-2. 配置バランスと接合部の強度
地震で倒壊・損傷を防ぐためには大きく分けて、2つのことを行います。
1つが「壁を強くするコト」と「壁の量を確保するコト」です。
壁には壁倍率という考え方がありますが、その壁が持つ強度のことを指します。
910mm(半間)の壁に、筋交い(30mm×90mm)が1本入れば1.5倍、筋交い(45mm×90mm)が1本入れば2倍、といったように壁が強くなっていきます。
このように壁倍率を持った壁を「耐力壁」と呼びますが、耐力壁をたくさん設けることで強くなります。
そして2つ目は、その耐力壁の「配置バランス」が大事です。
強い壁がたくさんあったとしても、バランスが悪いと地震によって揺らされることで、壁が少ないところにエネルギーが集中しやすくなります。
また地震は横揺れ・縦揺れなど、どのような方向から、どのぐらいのエネルギーがかかるか、三次元的に分析しないと本当に地震に強い家とは言えません。
このように配置バランスまでしっかり見ないと、耐震等級が高くても倒壊・損傷のリスクが増えてきます。
3. 構造計算(許容応力度計算)によるチェック
しかし、一般のお施主様がこのような耐力壁の必要量の計算や、配置バランスが良いか悪いか?は判断できません。
それでは、住宅会社と打合せをする中で何をチェックしたらいいのでしょうか?
それは「構造計算(許容応力度計算)で耐震等級3を取得するプランにしてください」の一言でOKです。
現在では、一般的な住宅では簡易的な計算である「壁量計算」で問題ありません。
これは「4号特例」と言われており、最新の情報では撤廃も検討されているような建築基準法の条項に明記されています。
300㎡を超えるような大きな建物や、鉄骨などは構造計算(許容応力度計算)が義務化されていますが、住宅の申請の簡素化のために省略されてしまっています。
しかし、一生の家となるみなさんの家はそれで良いでしょうか?
上図は構造計算と、法律でOKとなっている壁量計算での計算項目の差です。
先ほど地震で家が倒壊するときに解説した「柱接合部強度」「梁接合部強度」「耐力壁の配置バランス」は、壁量計算では省略・簡易化されてしまっています。
このことから、壁量計算では地震に強いとは言い切れない、ということに繋がります。
4. 構造計算をやっていない会社の方が多い
また、この構造計算(許容応力度計算)をやっていない会社の方が実は多いのです。
確かに構造計算をしないことは法律違反でも何でもありませんが、果たしてそれは本当に良いのか?が一番のポイントです。
建築士による計算を行っていますが、家の強度不足が建ててから発覚するような事例もあり、建っているにも関わらず「建築基準法違反」になってしまうことも。
事例1)1都4県で昭和63年~平成18年に建てられた583軒で強度不足が発覚
事例2)岩手県で平成13年~平成25年に建てられた11軒で強度不足が発覚
4-1. 構造計算をやらない理由は「住宅会社側の都合」
それでは、なぜ構造計算をしないのか、については各々の事情があるので、断定はできませんが多くが住宅会社側の都合です。
・構造計算は費用が高いですよ?
・審査期間でも構造計算まで求められていないですよ?
といったことを言われるかも知れません。
コストダウンが目的、申請や計算が面倒くさいといったことが目的になっているケースが多く、お客様の家の耐震性を本当に考えているとは言いにくいでしょう。
テクノストラクチャー工法でも、構造計算は一般的な相場に比べて安いとは言え、費用がかかったり、時間もかかったりします。
しかしテクノストラクチャーの家は、審査機関のチェックが免除されるかどうかは関係なく、お客様の建物の安全を目的として全棟で構造チェックを行っています。
5. まとめ
ダイシンホームでは建売(分譲住宅)でも注文住宅でも、「全棟」構造計算による耐震等級3になっています。
プランを作成していく過程で、開口部があまりにも大きい等の場合には、相談をさせてもらうことが発生しますが、これも当社の都合ではなく、みなさんご家族の命を守るために大切なことをご理解ください。
当然、ご希望のプランも大事なので、打合せをすすめる段階で随時ご相談し、耐震性能の確保とご希望のプランを極力両立できるように努めています。
気になった方は、ダイシンホームまでご相談ください。
また地震が気になった方は、合わせてテクノストラクチャー工法の特徴(基礎編)・テクノストラクチャー工法の特徴(応用編)もご覧ください。