
住宅の断熱性能に関する1つの考え方について解説をしていきます。
最近はどこの住宅会社も、高断熱です!ZEHレベルです!HEAT20レベルです!という訴求をしているのではないでしょうか?
当然、高断熱にすれば高断熱にした分だけ、効果もたくさんあるのでは?と思う方が多いと思いますが、実はそうではありません!
今回は、断熱が高い家とそうでない家の効果の違いや、自分に合った断熱方法がわかるような内容になっています。
それでは。今回の記事の要点がこちらです。
・UA値を高めることは大事だが、実はある一定のラインから体感できなくなる。 ・高断熱を極めるメリット2つあり、保温性が上がって快適性があがることと、光熱費の削減が見込めることですが、この効果以外に実は隠れたメリットがある。 ・高断熱をし過ぎるデメリットは、断熱に関するイニシャルコストがあがってくること ・愛知県(三河地域)は全国でも比較的温暖な6地域となっており、“ 体感効果 ”と “ 光熱費の削減額 ”と“ イニシャルコスト ” の3つのバランスを考える必要がある |
1. UA値とは?
UA値とは、住宅の断熱性能を表す数値です。
Uは熱還流率と言って、壁や床、天井などからどれだけ熱が逃げやすいか?を表す値で、このU値の家全体の平均(AverageのA)を算出したものがUA値となります。
壁や屋根、1面1面における熱の逃げにくさを計算することで、その家の「保温性」を数値化することができます。
国で家を新築するときに、推奨する省エネ性能が規定されていますが、愛知県(三河エリア)は6地域という地域区分になります。
UA値が0.87W/㎡・Kを下回ることで基準自体はクリアしますが、実は基準を少し下回るだけでは「体感」面から不十分であると言われています。
ダイシンホームでは、「体感」と「光熱費」の2つの側面で明確な理由から、標準ではZEHレベル※の断熱性能になっています。(※プランによって標準仕様で達成できないこともあります)
それでは、まず高断熱にすることによる一般的な効果をみていきましょう。
2.高断熱に設計する2つの効果
高断熱の効果は大きくみて、「室内の温熱環境の快適性を上げること」と「ムダな冷暖房を抑制し光熱費を抑えること」の2つですが、実はこの効果に隠れたメリットもあります。
この2つの効果と、その効果に隠された効果もみていきましょう。
2-1. 室内の温熱環境の快適性を上げることと「+αの効果」
断熱性能が上がることで、水筒の魔法瓶のように冬は暖房した空気を、夏は冷房した空気を建物内に長く閉じ込めておくことができます。
また昔の家での真冬の状況を想像してもらうと、暖房しているリビングは暖かくても、廊下やトイレは寒い、という状況がありますよね。
断熱性能を上げることは、廊下や洗面所と言った部屋も寒くなりにくく、部屋単体でなく家じゅう全体で快適な温熱環境を創りやすくなります。
ここまでは誰でも想像ができるメリットです。
しかし、廊下など非居室部分の温熱環境が改善されることで、「プランニングの自由度が上がる」、+αのメリットが生まれます。
昔の家はリビングとダイニング、キッチンが独立した部屋だった家が多かったです。
耐震といった断熱と異なる理由もありますが、部屋を独立して設計していた大きな理由は、「温熱環境のコントロールのしやすさ」からと言われています。
断熱性能が低い家でも、小さい部屋にすれば冷暖房器具が効きやすく、温度コントロールがしやすい反面、大きな空間はそれだけ容量の大きい冷暖房設備が必要になってきます。
外の気温によっては冷暖房器具の能力が追い付かず、冷房を付けているのに暑い・暖房つけているのに寒い、という状況になりやすいわけです。
家全体を高断熱化すると、大きな空間をプランできなかったネックが外れるため、大きなリビングや吹抜などまで、温熱環境を気にすることなくプランニングができます。
これにより、昔の家に比べてプランの自由度が上がっており、テクノストラクチャー工法と組み合わせてもらえれば、さらにプランの自由度は向上します。
2-2. ムダな冷暖房を抑制し光熱費を抑えることと「+αの効果」
一定以上の保温性があると、冷暖房の効きがよく「エアコンや暖房器具などを必要以上に使わなくても快適に過ごせる家が実現する」わけです。
これにより、冷暖房にかかるエネルギーが少なくなり、年間で使うエネルギーを抑制、電気代の抑制に直結します。
単純に光熱費が安くなることがメリットですが、ここではもう一段階、深く考えていただきたいことが「家から出ていくトータルのお金」です。
ダイシンホームで新築される方の多くが住宅ローンを組まれますが、その年数は35年が一番多いです。
住宅ローンは最長でも35年で完了しますが、光熱費はその家に住んでいる、生きている限りかかり続けます。
その光熱費が昨今、急激に上がっていることは世知辛い現実ですが、光熱費を抑えることは「一生のローンを抑制すること」に繋がります。
新築時にはどうしてもイニシャルコストが気になりがちですが、解説した光熱費、さらにはメンテナンスコストまで考えていくことで、生涯にかかる負担を減らすことができます。
ダイシンホームでは、建築の相談だけでなくこのようなライフプラン設計、新築した時の想定されるランニングコストまでご提案できますので、お気軽にご相談ください。
3.高断熱には「適度な範囲」がある
ここまでは高断熱で生まれる効果について紹介してきましたが、実はダイシンホームでは「必要以上に高断熱を目指すこと」は、おすすめしていません。
ここにはダイシンホームが考える「体感」と「光熱費」、そして皆さんが負担される「建築費のコスト」のバランスの考え方があります。
それでは、そのバランスの考え方をみていきましょう。
3-1.愛知県の気候に合った断熱性能なのか
ダイシンホームではZEHレベルの断熱(UA値:0.6前後)が標準ですが、愛知県で新築をしている会社だから、このレベルで設計を行っています。
もちろん、さらに高断熱を目指したい方には、要望通りの断熱性能まで高めていくことも可能です。
しかし、正直それは「自己満足」になってしまう可能性が高いと考えています。
理由は2つあります。
1つは、ZEH以上の断熱性能にしても「体感で5%程度の差しか出ない」こと。
上図は、経済産業省によるZEH住宅を建てた人に対するアンケートからの抜粋です。
「冷暖房の効きが悪いと感じた人の割合」を示したグラフですが、断熱性能の差による体感差は、夏はほとんどなく、冬も「暖房の効きが悪い」と感じた人の差が約6%です。
(※UA値0.6以下 対 UA値0.28~4.0の比較差)
ハッキリ言ってしまうと、「超高断熱にしても体感差でほとんどわからない」というのが現実です。
UA値が1を軽く超えるような、“ 昔の実家 ”のような家と今の家では断熱性の向上は、雲泥の差であり、ZEHレベルの断熱性能であれば非常に快適に過ごすことができます。
服に置き換えて例えるなら、ZEH前後であれば結構いいダウンジャケットを羽織っているイメージです。
さらに高級ブランドの暖かいダウンジャケットにしても、体感差がそこまで感じることができるか?は冷静に考えた方が良いでしょう。
そして2つ目は、「断熱性だけ上げても光熱費の削減額は知れている」という事実です。
上図は同じ大きさ・同じ仕様の家でUA値だけ変えて、計算した結果です。
ZEHレベルの家(UA値:0.6)の月額の光熱費が19,871円に対して、UA値0.28の家の光熱費が18,523円と、その差は1,300円/月。(22年7月の光熱費ベースでの算出)
1,300円の差に、断熱にイニシャルコストをいくらかけるのか?
UA値を0,28程度まで上げようとすると、外張り断熱併用やトリプルサッシなどを活用してようやく到達するレベルです。
建築費にかかる差は、少なく見積もっても200万円以上になります。
200万円を1,300円で割ると、回収に約1,500ヵ月(約128年)かかる試算になります。
計算は一次エネルギー消費量と言って、国の基準でも定められているエネルギー(J:ジュール)を、昨今の中部電力の電力プランに相当する電気プランに当てはめた時の試算です。
このことから、断熱性を一定以上に高めても「体感として実感しにくい」「節約できる光熱費が少ない」ことから、ちょうどいい断熱レベルでの設計をおすすめします。
4.愛知県ではZEH相当~G1程度がおすすめ
上記を踏まえて、ダイシンホームでは最終的にもっとも効率的な断熱性を「ZEHレベル」であるとしています。
温熱環境の体感としても、快適と感じる方が8割を超え、イニシャルコストでも極力抑えることができた結果となっています。
もちろんG2グレードを超えるような断熱性能がある住宅会社もたくさんありますが、単純な性能差を比べるのではなく「何を目的に高断熱にしているのか」まで聞いてみましょう。
4-1.一次エネルギー消費量まで計算してくれるか
そして、光熱費の削減でもう1つ大事なポイントは、「一次エネルギー消費量」です。
一次エネルギー消費量に関して詳しくはこちらの記事を参照ください。
結論だけお伝えすると、断熱だけでは経済メリットは低く、エネルギーを多く消費する「冷暖房機器」や「給湯機器」を高性能なタイプにすることがおすすめです。
断熱性能だけでなく、ここまで考えた家づくりが大事であると言えます。
5.まとめ
今回お伝えしたい内容は、愛知県(三河地域)は全国でも比較的温暖な6地域となっています。
快適性をできるだけ極めたい、住宅の性能を極めたい、という方は高断熱に設計することは決して悪いことではありません。
ただし、光熱費の抑制を目的にすると話が変わってきて、一次エネルギー消費量が大事になってきます。
この一次エネルギー消費量については、「一次エネルギー消費量とは?光熱費抑制に効果あり!住宅の省エネをわかりやすく解説」で解説していますので、節約やお金が気になっている方は合わせてご覧ください。
ダイシンホームでは、“ 体感効果 ”と “ 光熱費の削減額 ”と“ イニシャルコスト ” の3つのバランスを考えて最適な住宅をご提案しています。
見積など気になった方は是非、ダイシンホームまでお気軽にご相談ください。