今回は、新築で取り入れたい人気設備の1つにもあがってくる「床暖房」について深堀していきます。
寒い時期は、足元が暖かい床暖房の快適性はなんともいえない心地よさがありますが、導入にあたっては様々なことを理化していないと、後々後悔する原因にもなります。
床暖房のメリットだけでなく、メンテナンスやランニングコストの実態を紐解いていきます。
まずは、当記事の結論からです。
・床暖房のメリットは、風を起こさず部屋を暖めることができるため、ホコリが舞いにくい ・床暖房では乾燥しないというのはウソ。湿度が元々少ない空気を暖めることは変わらない為、相対的に乾燥はしやすい ・ランニングコストは、暖房機器としてはかなり高額な部類で、特に熱源の選択次第ではかなりコスト増になるが、昨今の光熱費高騰で、10畳程度の暖房面積でも月額で1.5万円を覚悟 ・メンテナンスについては、熱源・リモコンの取替の費用はかかるとしても、床暖房自体の耐久年数は30年以上であり、現在の電気式・温水式は故障・水漏れするリスクはほぼない (新築時の施工ミスをのぞく) |
1.床暖房のメリット
まず床暖房のメリットは、足元が暖かいという誰でもわかる内容以外では、
・風を起こさない為、ホコリが舞いにくいこと
・エアコンに比べて、部屋の上下温度差を少なくできること
この2つになります。
1-1.ホコリが舞いにくい
現在、東海地方を含む一般地では、エアコンによる暖房が主流です。
エアコンは、約45℃ぐらいの温風を部屋の中に放出することにより部屋をあたためるため、ホコリが舞い上がりやすい反面、床暖房は気流での暖房方式ではありません。
特に冬場は空気が乾燥しているため、エアコンを使うと風によってホコリも舞いやすい状態であり、アレルギーなどを気にされる方にはおすすめです。
1-2.部屋の上下間温度差が少ない
空気には、あたたかいと上にあがっていき、冷たいと下にたまりやすい性質があります。
エアコンは、温風を出して空気をあたためるため、部屋の中で上下での温度差が発生しやすいことがデメリットで、特にエアコンは部屋の高い位置に設置されるため、冬季は一層、足元にあたたかい空気を届けにくいのです。
一方、床暖房は床から温めて、部屋を均一的にあたためることになるため、温度差が出にくくなります。
1-3.床暖房は乾燥しないは誤解
冬季に乾燥がひどい理由は、エアコンが悪いわけではなく、そもそも空気中に含まれている水分量が少ないことが原因です。
空気は水分を含んでいますが、温度が低いと含むことができる水分量が少なくなります。
冬季は外気温が低いため、水分を持っていないカラカラの空気が、部屋の中に入ってきて、その空気を暖房で温度だけをあげることになります。
そうなると、空気中の水分量は変わらず、温度だけ上がると「相対湿度」が下がり、さらにカラカラの空気になってしまいます。
これはエアコンによる暖房でも、床暖房による暖房でも同じです。
一方、ガスファンヒーターは、ガスを燃焼させている過程で水分も出るため状況が異なりますが、いずれにしても床暖房は乾燥を抑えることができる、というのは誤解です。
2. 床暖房の種類
床暖房は大きく分類して、温水式と電気式の2つに分類されます。
また床材と一体になっているタイプと、床暖房パネルが分離しているタイプと2種類があり、床の状態や新築・リフォームなど工事状況に合わせて使い分けをします。
小さい部屋に向いている床暖房は、電気式です。
コンパクトな設置が可能で、入 / 切の多い個室などに使われることが多いです。
一方で、一般的に採用が多いのは温水式。
お湯もしくは不凍液を循環させることで床を暖めますが、比較的大きな部屋で面積が大きい部分に採用され、ランニングコストも抑えやすい方式です。
特徴としては、低温ヤケドなどにもなりにくく、やさしい温かさが魅力になっています。
それでは、それぞれの気になるランニングコストをみていきましょう。
3. 床暖房はランニングコストを覚悟の上導入を
床暖房を導入する際に、一番考えていただきたいポイントは、「ランニングコスト」です。
結論から申し上げると、床暖房はイニシャルコストも決して安いものではありませんが、それ以上にランニングコストがかかってくる覚悟で導入しましょう。
熱源と呼ばれる熱を作り出す機械の方式(ヒートポンプ・ガス給湯器・エコキュート併用・電気)によっても、大きく異なってきます。
それでは実際にどれくらいのコストがかかってくるか?をみてみましょう。
3-1.シミュレーションでは3,900円~(月額)と表記
パナソニックの試算から、紐解いていきましょう。
10畳の部屋において、床暖房面積率約60%とした場合の月額の試算です。
温水式(8時間運転) | ヒートポンプ式 | 3,900円 |
石油ボイラー | 灯油式 | 4,900円 |
電気式(8時間運転) | PTCヒーター | 3,900円(温度低め)~7,300円(あたたかめ) |
なお、都市ガスは概ねボイラーと近似値になりますが、LPガスではその約1.5倍以上になります。
3-2.実態は床暖房だけで約1.5万円以上(月額)かかることも
ただし、上記の計算条件を冷静にみていくと、まず8時間の計算となっています。
床暖房は1度冷えてしまうと、立ち上がり運転および部屋があたたまるまでに約1~2時間かかります。
そのため現実的には、寝ている時間帯のみOFFにしている、または1日中付けっぱなしにしている方が多いです。
もし24時間運転させると、上記の試算の単純に3倍のコストになりますので、10畳を暖房するのに約1.2万円~(月額)かかります。
また、上記の試算は電気単価も28円、灯油代も94円で計算されており、昨今の光熱費高騰の状況は加味されていないため、2022年10月時点の電力単価・灯油単価(電気単価:36円、灯油121円)に割り返した実際のランニングコストは、
温水式 (24時間運転) | ヒートポンプ式 | 14,976円※3,900円(8時間運転)×24時間運転×最新単価 |
石油ボイラー (24時間運転) | 灯油式 | 18,816円 ※4,900円(8時間運転)×24時間運転×最新単価 |
電気式 (24時間運転) | PTCヒーター | 14,976円(温度低め)~28,032円(あたたかめ) |
都市ガスは概ねボイラーと近似値になりますが、LPガスでは約1.5倍以上になります。
またリビング全体を暖房しようと思うと、キッチン・ダイニング・リビングに最低でも15畳は必要になってくるため、さらに上記の金額から1.5倍!
LPガスでは恐ろしい金額になってきます。
LDK全面的に床暖房を敷いて24時間回し続けると、最低でも月々2万円の光熱費がプラスオンしてくることになるため、他の電気使用と合わせると軽く3万円を超えてくる計算です。
アレルギーなどでエアコン暖房では生活に支障が出るといった、差し迫ったニーズがある方以外は、ここの金額を出してまで導入するかどうか、冷静に考えてみましょう。
多くの方が、導入したものの電気代の請求額を見てビックリしてから気づきます。
イニシャルコストも数十万円単位~で安いものではないため、せっかく導入したのに光熱費が気になってほとんど使っていない、という方も多いです。
4.メンテナンス費用は意外とかからない
床暖房は、床に埋め込むためメンテナンスが心配!と思う方も多いと思いますが、結論的には壁についているリモコンなどの機器は故障での交換が必要になるケースがありますが、床に埋め込まれている部分はメンテナンス不要と言っても過言ではありません。
電気式の場合はヒーターに電気を流す、温水式は温水を流すチューブがあるだけのため、基本的に故障することは考えにくいです。
温水式は漏水というクレームを稀に聞きますが、最初の施工時のミスがほとんどで、使っていて故障する・水漏れするようなものではなく、床暖房自体の耐用年数は30年以上と言われています。
メンテナンスよりも、2で解説したランニングコストの方が「知らないと後悔するポイント」としては重要です。
5.まとめ
ダイシンホームでは、お客様のニーズに応じて冷暖房もご提案していますが、昨今の主流はエネルギー効率の観点からもエアコンが主流になっています。
新築の際には魅力的に見える設備機器でも、正しいデメリットを理解して導入しないと落とし穴になってしまいます。
新築での打ち合わせにおいては、このようにデメリットもご案内しつつ、ベストな組み合わせをご提案しておりますので、担当者へお気軽にご相談ください。