住宅会社を何社か訪れた方や、家づくりをスタートした方であれば、どこかで聞いたことがある制震ダンパーについて、深堀していきます。
耐震を気にすると、制震ダンパーも付けた方がいいのかな?
制震ダンパーにはどんな種類があるの?
このような制震ダンパーに関する疑問を解消するような内容になっています。
それでは、今回の記事のポイントをお伝えしていきます。
・制震ダンパーは、エネルギーを吸収する部分の種類で、ゴム・油圧(オイル式)・鋼材の3パターンのタイプがある ・制震ダンパーの役割は、地震の揺れによる建物の被害を軽減するものであるのと同時に、強風や雪、小規模の地震など日常的な揺れを吸収する ・制震ダンパーは建物にかかる負荷、特に2階にかかる負荷を減らす効果がありますが、免震住宅のような揺れを大幅に吸収する効果まではない ・制震ダンパーを付けたから安心、ということはなく、制震ダンパーを含めて許容応力度計算を用いた構造計算が大事 |
1. 制震ダンパーとは
まず制震ダンパーとは、一般的には軸組工法に採用されるもので、地震などによるエネルギーを吸収できる機構を設けた筋交い(斜めになっている部材)のことです。
様々な種類が存在しますが、図のように柱・梁・土台部を斜めにつなぎ、ダンパーの中心でエネルギーを吸収するような構造になっています。
図のように端から端まで斜めになっているタイプもあれば、柱の中央付近に付けるような小型のタイプもあり、コストなどに応じて多くのタイプが存在しています。
1-1. 制震ダンパーは大きく分類して3種類
制震ダンパーには、エネルギーを吸収する部分の違いで、ゴム・油圧(オイル式)・鋼材の3パターンのタイプがあります。
テクノストラクチャー工法で採用している方式は、鋼材同士を擦り合わせてエネルギーを吸収する鋼材式となっています。
一方、オイルダンパーとも呼ばれる油圧式は、文字通り潤滑油がエネルギーを吸収する役割を果たしており、車の足回りの部品にも同様の方式が採用されています。
またゴムを緩衝材として採用しているタイプもあります。
いずれの制震ダンパーも、地震で掛かってくるエネルギーを熱エネルギーに変換して、建物への負荷を減らしています。
2. 制震ダンパーの効果・役割
制震ダンパーを設置すると、地震の揺れを吸収して家が揺れなくなるようなイメージを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。
しかし結論から申し上げると、制震ダンパーの効果と役割は以下の2つで、揺れが全くなくなるわけではありません。
・細かい揺れを吸収して、建物に対する積み重なるダメージを軽減すること ・大きな地震の際に接合部の破断を防止し、特に2階建ての場合は2階部分にかかる負荷を減らす効果がある |
それでは、この2つの効果を詳しくみていきましょう。
2-1. 制震ダンパーは日々の細かい揺れを吸収
1つ目の細かい揺れに対する効果について、見ていきましょう。
家は地震の揺れ以外にも様々なエネルギーを受けます。
愛知県では、雪による縦方向にかかる負荷は少ないものの、夏季を中心に台風のような強風、もしくは弱いエネルギーとは言え、日々の風から受ける横方向のエネルギーで家は日々細かく揺れています。
また、制震ダンパーは震度6~7のような大地震だけでなく、震度1~4程度の比較的小さな地震から、家に受けるダメージを軽減する効果があります。
2-2. 大きな地震の負荷を軽減する効果(層間変形角の話)
2つ目の、気になる大きな地震に対する効果です。
大きな地震の場合、地面が大きく揺れることから、制震ダンパーが設置されていたとしても家は揺れます。
しかし、制震ダンパーの役割としては、家が倒壊する要因の1つでもある、2階の振れ幅を軽減することに繋がります。
耐震性を考える時に、「層間変形角」というものがあります。
層間変形角とは、地震などの揺れによる建築物の変形量を角度で表したものです。
図で見る通り、地震などで家の変形が大きくなると、それに伴って変形する角度が大きくなります。
その角度などは建築基準法で細かく設定されていますが、みなさんに知っておいてほしいポイントは、地震では2階の方が大きく揺れる、ということ。
物理の原理として、高さが高い2階の方が、掛かるエネルギーは大きくなり、同時に建物が振られる変形量は大きくなります。
制震ダンパーは、この2階の振れ幅を抑え、建物全体にかかるエネルギーを軽減する役割があり、決して地震で揺れない家(軟体動物のような柔軟な家)になるわけではありません。
3. 制震ダンパーもテキトーに入れては効果半減
つづいてのポイントは、制震ダンパーは導入すれば何でもいいわけではありません。
結論から申し上げると、制震ダンパーが必要な場所を、許容応力度計算から導いて設計しないと、意味を成さない可能性がある、というポイントです。
3-1. 地震で負荷がかかる場所は?
一般的な壁量計算(仕様規定)では、4分割法といって家を4つにわけて、それぞれの場所にある壁の量のバランスを見るだけです。
一方、テクノストラクチャー工法でも採用している許容応力度計算では、地震の際に家のどこの部分に負荷がかかりやすいか?を間取りごとに計算します。
この負荷が掛かりやすいポイント、そして制震ダンパー同士の配置バランスを考えて、制震ダンパーを入れ込まないといけません。
そのため、制震ダンパーを採用!と言っていても、許容応力度計算がされていない場合、数十万円も掛けて導入する制震ダンパーの効果が半減しかねません。
せっかく導入するのであれば、” しっかりとした耐震計算 ” である「許容応力度計算(構造計算)」を伴った形で導入しましょう。
4. テクノストラクチャー工法でも制震ダンパーがある
テクノストラクチャー工法でも、制震ダンパーを用意しております。
テクノストラクチャー工法で採用している「テクノダンパー」は、Kの字型で柱の中央付近に設置するタイプとなっています。
テクノダンパーは、パナソニックグループの住宅会社であるパナホーム(現・パナソニックホームズ)が鉄骨造住宅で培った制震技術を、テクノストラクチャーに応用して開発されました。
具体的には、超高層ビルなどの大規模建築でも用いられる「座屈拘束技術」という技術を活用して、地震による建物の変形を低減させます。
4-1. 一般木造住宅と比べ最大約70%揺れを低減
「テクノダンパー」は、テクノストラクチャーの耐震構造と組み合わせることで、一般木造住宅と比べて最大約70%の揺れを低減する効果があります。
また、ダンパー自体の耐久性も安心感の高い検証をされています。
テクノダンパーに大地震に相当する負荷を100回以上与えても、本来の制震機能が維持できることが確認されており、長期間壁に埋め込むものとしての安心感があります。
また、温度変化などの周辺環境による影響が少なく、耐久性の高い部材を使っていることから、経変劣化が少なく安定した性能を保つことができます。
5. まとめ
制震ダンパーに関しての基本的なポイントを紹介してきました。
住宅業界の中では、様々な種類の制震ダンパーがあり、各社「うちの制震ダンパーが一番安心です!」というPRをされるでしょう。
しかし、その制震ダンパーを入れる位置は、家の間取りや地盤、基礎の強度などによって当然変わってきます。
それらが構造計算で計算されていないまま、導入されても本来の制震機能を発揮できるか不安です。
また、地震の時に負荷がかかる場所にないといけませんが、壁量計算(仕様規定)ではそこまで判明できないため、制震ダンパーを採用する際には構造計算(許容応力度計算)とセットで考えましょう。
ダイシンホームでは、テクノストラクチャー工法を採用して構造計算をしっかり行っており、制震・耐震に関して不安な方はぜひご相談いただきたく思います。
安心感の高い家づくりをご案内させていただきます。